勉強会

6月の勉強会 (2024/06/28)

6月の勉強会のテーマは

「いろいろな構図《空間》」について、Sさんが発表してくれました。

 

15世紀イタリアのルネサンス期に確立された「線遠近法」のなかでも

消失点を1つもつ「一点透視法」は、レオナルドダヴィンチの「最後の晩餐」が有名です。

Z-4 「最後の晩餐」

一点透視法は、真正面からみている構図です。

キリストの右のこめかみに設定された消失点。

実際にキリストのこめかみからは制作に使ったと思われる釘痕が残っています。

 

二点透視法は、ゴッホの作品で使われています。

TT-5 「オーヴェールの教会」

縦の線はすべて地平線に対して垂直で、真正面から真横に少し回転した構図。

手前に飛び出して見えるのが特徴です。

 

三点透視法は、俯瞰(上から見た図)や煽り(下から見た図)の構図です。

絵画では、あまり使われないようですが、ゴッホの作品は三点透視法の効果も使われているようです。

 

ほかにも、大気がもつ性質を利用した「空気遠近法」があります。

遠景に向かうほどに対象物は青みがかったり、白みがかったり見え、

遠隔線が不明瞭になり、対象物が霞んで見えます。

これを利用したのがレオナルドダヴィンチの「モナリザ」です。

UU-15 「モナリザ」

色彩上の工夫により、空気遠近法という技法が確立されることになりました。

 

そのほかにも、色彩遠近法、消失遠近法、曲線遠近法、上下遠近法、重畳遠近法、斜投象法など、

様々な遠近表現があり、絵画はいくつかを組み合わせてできています。

ただし、科学的な技法に頼ってばかりいるのではなく、バランスが考えられているのが名画と言われるもので、

ドイツの心理学者であり、視覚的芸術における知覚構造を分析したルドルフ・アルンハイムの言葉に集約されています。

 

* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *

世の中でバランスが取れている状態というのは部分的、

もしくは一瞬しかなく、世界はつねに有為転変している。

そして芸術というのは、そういう中で、バランスが取れた、

一瞬の理想的な空間を絵の中に組織化しようとする試み。

絵は単にバランスを取ることが目的なのではなく、その方法は無限にあり、

どうバランスを取っているかという点に意味が込められている。」

                   ルドルフ・アルンハイム

* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *

絵画を鑑賞する際には、ぜひどのような空間を表現しているのか、構図にも着目してみてください。